お猫様の言うとおり

人と関わることを拒絶している兄さんが、放っておいたら僕の前からも消えてしまうのではないかと、

ずっと、恐ろしかった。


「無理やり生徒会になんて入れたから、すごく怒ってるんだろうと思ってたんだけどね。」


僕から逃げられないように、責任という鎖をつけておいたんだ。


「最近じゃあ、ちゃんと仕事するようになったんだ。」


さながら、猫にリードをつけたようなもの。やり方は、間違っているのかもしれないけど。



「ああ、そういえば、兄さん“気になる人”がいるみたいだよ。あの人が誰かに興味を持つなんて、それだけですごいよね!」


どうすれば兄さん楽になるのか、僕には正しいやりかた一つ分からないから…


「その人が、兄さんを助けてくれないかな…?」

シーツの上に乗せた手を、力いっぱい握り締めた。

いくら話しても、答えてほしいと願っても、叶わないことぐらいとっくに理解できている。


何度も願ったし、何度も諦めたから。

そういう姿が兄さんを苦しめていても、僕だってこのやり方を捨てられやしない。


毎日話しかければ、ほんのわずかでも笑ってるように感じたり、怒っているように見えたり、

確かに生きているのだ分かれば、いないよりずっとましだと思うから。



楽になってほしいのに、何も捨てないでほしい。


「僕、わがままかな、母さん…。」



……―


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