お猫様の言うとおり
終章:最後の恋人(p39-
“キミ”はいつもそこで寝ている。
この森で一本だけ、周囲の木と距離をとるその木の下で、お昼からずうっと。
キミはワタシに名前をくれたわ。
昔、大切な友達と会えなくなってから、誰もワタシを呼んではくれなかったから、
寂しくて、寂しくて。
少しずつ年をとって、うまく走れなくなって、
たくさんは食べられなくなって、たくさん眠くなって…、
皆と同じことができなくなったから、
悲しくて、悲しくて。
だからね、キミが名前をくれたとき、ワタシはとても、嬉しかったの。
『おまえは幸せかい、クロ?』
幸せよ、キミが優しい声で名前を呼んでくれるから。
キミの隣は温かいから。
でも悲しい。キミは誰の傍にもいないから。
キミが苦しそうだから。
ねぇ、キミは幸せ?
キミから貰ったぬくもりに、お返しがしたいの。
ワタシは小さくて、もうおばあちゃんだけど、
キミが寂しくないように、教えたいことがたくさんあるの…
…―