お猫様の言うとおり
モゾッと、腹に何かが乗るのを感じて、目を開くと、

クロが自分のあごを、僕の腹に乗せてこちらを見ていた。


クロは、僕がこの木陰でサボっていると、必ずやってきた。


飼い猫だったのか、僕を恐れる様子もなく、こうやって甘えてくる。


柔らかい毛で覆われたその顔を、僕の頬に擦り付けてくることもあった。


「…くすぐったいよ、クロ。」


でも、"撫でて"と訴えているような、そんな眼や、仕草がどうしても苦手で、


僕は、一度もクロを撫でたことがなかった。



餌だってやったことがない。


年寄りのようだし、食が細かったのかもしれない。


撫でなくても、餌をやらなくても、


ほおっておくと僕が動くまで、クロは黙って横で寝ていた。



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