お猫様の言うとおり
あの大きな木の陰に、わずかな陽を求めて生えた芝生の上に、ぼすっと体を沈めて、少し陽の落ちた空を見上げた。
「はぁ、まだ寒いな…。」
僕の現実は、それこそうざったらしいほど、重たく肩に圧し掛かっている。
だから、囚われたくなんかない。
母は、僕が10歳の時から、植物状態だ。
それが、現実。
「ミャー。」
不意に、泣き声の聞こえた方へ顔を傾けると、クロが僕の腕に鼻先を押し当てていた。
「僕も、猫だったら良かったな…。」
囚われずに、自由に、
「おまえは幸せかい、クロ?」
甘えさえさせない僕の所へ来て、
「ミャー。」
また一声鳴いて、クロは顔を掻いた。