アンタ達、あたしの日常どこやった?
振り向いた中原くんは、言葉を続ける。
「そう思ったのは俺だけじゃないと思うよ。自慢じゃないけど10票差なんて僅差で勝ったのは今年が初めてだ」
もしあそこで成田さんが具体的な話なんてしてたら俺が負けてたかもね、と笑いながら中原くんが、不意に立ち止まると教室を指差した。
「…なんて話は他の誰にもしてない内緒の話。って事で、ご到着」
あ、なんだ会室に着いたのか。
…なんか、ちょっと残念。
何が残念かって言われると良く分からないけど。
「…じゃあ、改めまして。ようこそ"真颯学園高等部・真颯会"へ」
執事みたいにうやうやしく、中原くんが、引き戸を引いた。
途端、見えない何かがあたしの背筋を伸ばした。
ついに、あたしは来たんだ。
憧れの"真颯会"に、役員として。
「皆、揃ってますか?」
あたしの後ろからのぞきこんだ中原くんが、室内へと声をかけた。
「はい、中原くんと成田さん待ちですよ」
先に室内に来ていたのだろう、にこやかに森川さんが出迎える。
その奥には2年生と3年生が数人。
うわ、待たせた感じ?
「遅くなって、すみませんでした!」
あたしは思いきり頭を下げた。