アンタ達、あたしの日常どこやった?
い…一緒帰ろって…まあ同じ路線ですけど…
電車に乗りながらうろたえるあたしに不思議そうな顔をすると、そうそう、と中原くんが口を開いた。
「先に言っとくけど、成田さんの今年1年、俺が貰うから」
「…はい?」
「それくらい忙しいから、覚悟してね、って意味」
「あ…ああ、はい」
あー、びっくりした。
妙にドキドキした胸を撫で下ろしながら息を吐くあたしの視界に何かが現れる。
「はい、」
「なんですかコレ」
1本の携帯用USBメモリーだ。
「この中に、昨年までの予算編成と、会録がまとめてあるから。中身、頭に入れといてね」
「あ、はい分かりました」
…って、今日の引き継ぎも込めたら半端ない量の情報量じゃんソレ…!!!
「もしかして、コレ全部中原くんの頭の中には」
「入ってるよ、概要くらいは」
またさらっと恐ろしい事を言ったぞ、この人。
要はあたしにもそれを要求する訳ね。
「そうじゃなきゃ、俺だけの"真颯会"になっちゃうから」
あたしの言いたいことに先回りするように、中原くんは言葉を続けた。
「俺は成田さんの描く"真颯会"が見たくて成田さんを副会長に指名したんだからね」
…はい、ご期待にそえるべく頑張ります。
じゃあ、とあたしの手のひらにメモリーを置いた中原くんは、駅のホームに降りて行く。
「また明日、放課後に会室でね」
あああ、相変わらず笑顔の眩しいこと。
あたし、とんでもないことに巻き込まれちゃったんじゃなかろうか。
彼の後ろ姿を見ながら、ぼんやりとそんな事が頭をよぎるのだった。