アンタ達、あたしの日常どこやった?
恥ずかしくなって辺りをきょろきょろしてしまうあたしの横で、森川さんはのほほん、と中原くんと挨拶を交わしている。
「来られるの、早かったんですね」
「うん、まだ色々見たい資料有ったから、授業終わって直で来たんだ」
「昨日USBメモリーに、ここ数年分の会録と、ある程度の発行物は落として帰ったんで、何かありましたら聞いて下さい」
「うん、今年も頼りにしてるから」
ようやく落ち着いたあたしは、2人の会話を脳内でリピート。
…ちょっと待て。
ものすごい会話をさらっとしてないか、この2人。
「成田さん、」
「…はい、」
「昨日の引き継ぎとメモリーの件だけど」
うっわ、やっぱ来た…!
ケータイ小説読んで忘れてました、とは言えないよなあ…
「引き継ぎはなんとか頭に入れましたけど、メモリーは概要だけで…すみません」
ここはさすがに素直に謝っておこう。
「ああ、引き継ぎが入っててくれれば充分。メモリーはゆっくりで良いよ」
参考程度に見といて欲しいだけだから、とやけにあっさりした返事。
…あたし、中原くんにどこまで見破られてるんだろう…