アンタ達、あたしの日常どこやった?
「じゃあ、また」
ひら、と軽く手をあげて先に出た中原くんは、そのまま人混みのなかに消えていく。
なんとか改札までたどりついたあたしは、真澄の姿を見つけた瞬間、へなへなと崩れ落ちた。
「ちょ、どしたん麻架!」
「王子に殺された…」
「はあ?」
何度も言ってるじゃないか。
あたしはイケメンに死ぬほど弱いのだ。
一時期本気で某事務所のアイドルの追っかけしてたくらい弱いのだ…
そんなあたしに、徹夜明けのあたしに打ち込まれたキラースマイル。
その結果はと言うと…
「あああ、頭真っ白なったあああ!!!」
辺りの生徒たちが振り返るのも気にしてられるか。
あたしの徹夜の努力は、あのわずか十数分で砂粒のように崩れ去っていったのだった。
手の中に残ったのは、ぐしゃぐしゃになった(あたしが握りしめてたからだけど)、ルーズリーフ。
うわあ、こんなんであたし今日の監査面接受かるのかなあ。
むしろこれも中原くんの計画だったらどうしよう。
あたし、せめて選挙には出たい。
…じゃなかった、目指せ下剋上、だった!
「あたしが狙うのは会長枠…」
座り込んだまま呪文のように呟くあたしを、真澄は不思議そうな顔をして見下ろしていた。