アンタ達、あたしの日常どこやった?
自分の机の下、周囲の机の下、必死になってあたしは床にはいつくばって探し回る。
…無い。そんな遠くに転がったはずないのに。
『無くしたら候補者失格らしいです』
そんな森川さんの話を思い出して、あたしは背筋が寒くなるのを感じた。
待て待て待て待て。
ここまで来て、そのオチは無いだろ…!
「何で無いのよ…」
さっきまで確かに有ったのに。
ふと、あたしはさっき教室に戻って来た時の事を思い出す。
動いていた鞄。
散らかったペンケース。
…まさか。
「誰か、あたしのハンコ持って行きやがったな…!」
だって、そうとしか考えられない。
普通、勝手に物が動くわけないじゃん。
誰かがあたしが職員室にいってる間に、意図的に教室に侵入し、ハンコを持ち出したとしたら…!
だけど、そんな事一体誰がするだろう。
あたしが真颯選に出れなくなって、得をするのは誰だ?
会長枠狙ってるっていう例の2年生?
それとも…中原くん…?
やだやだ、考えたくもない。
でも、事実教室は荒らされてハンコは消えた。
「成田、下校時間だから教室、鍵しめるぞ」
「あ…はい」
教室の鍵を持った立花先生がこちらをのぞきこんでいる。
とりあえずあたしは荷物をまとめると、教室を後にした。