アンタ達、あたしの日常どこやった?

「おはようございます」



やって来たのは、今日もお嬢さんがたに囲まれた中原くん。



にこやかな笑顔で、あたしは挨拶を返す。



「おはようございますー」



口々にお嬢さんがたから返ってくる挨拶。



その中で、ひときわ存在感を放つ人物を、あたしは呼び止めた。



「おはようございます、藤崎さん」



「…おはようございます」



幾人もの少女の中で指名された彼女が、不審げな顔をして足を止めた。



「…昨日。あたし、真颯選のハンコを無くしたんです」



え、という顔で中原くんが振り返る。



それがどれだけ重要なものか、彼もよく知っているからだ。



「放課後まではあったんです」



「あら、大変ですわね。早く選挙管理委員会に報告した方が良いんじゃありませんこと?」



その時点で候補者権利は無くなりますけど。



言外にそんな響きを響かせながら、彼女はいかにも大変、といった風に同情の顔である。



「…放課後。あたし日誌提出忘れて職員室に届けに行ったんです」



「それが、何か?」



「その間に、あたしの荷物誰かに荒らされたんです」



「…あら、怖い。遅くまで残ると恐ろしいことがありますのね。」
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