アンタ達、あたしの日常どこやった?
「藤崎さんも、そんなアンフェアな真似で真颯選をやる事が、どれだけ真颯会の名前を汚すことになるか考えて欲しい」
涙目になりながらうなだれていた藤崎さんが、鞄を開けると中から何かを取り出した。
真颯会の証明印。
ナンバーは1。あたしのハンコだ。
「私…」
「打ったのはやりすぎたかも知れません、それはごめんなさい。でも、あたし言った事は間違ってると思ってないんで」
ハンコを受けとると、あたしはそう言い切って靴箱の方へと向かう。
背後で藤崎さんが泣き出す声が聞こえたけど、あえて聞かないふりをした。
…あーあ、また中原くんに助けられてしまった。
やっは、こういう仲裁も王子上手いなあ。
こういうのがカリスマ性って云うんだろうか。
「…成田さん!」
その声にあたしは振り返る。
意外にも、追いかけてきたのは中原くんで。
「なんか…ごめんね、ややこしい事になってたみたいで」
「いや、これは多分、彼女とあたしの価値観の違いから来てた問題なんで、中原くんが謝ることじゃないと思います」
「うん、それは分かるんだけど、なんとなく」
「それより中原くんは、今は彼女の方に行ってあげた方が良いと思います、たぶん」
「うん…ありがとう」