アンタ達、あたしの日常どこやった?
『ただいまより、真颯選・選挙演説会を始めます』
司会の選挙管理委員会の先輩の声が聞こえる。
いよいよだ。
「じゃあ、お先に行ってきます」
何人かの先輩の演説のあと、森川さんの番。
うん、キレイにまとまってる、演説の見本みたいな文章。
彼女らしい、真面目な雰囲気だった。
で、あいだにひとり先輩が入って、いよいよあたしの番。
『次は、1年Cクラス、成田麻架さんです』
はい、行きます!
あたしは原稿用紙を片手に講壇へと向かう。
全校生徒の視線が真っ直ぐにこちらを向いている。圧巻。
その辺の子ならここに立つだけでプレッシャー負けしそうだ。
どおりで声が震えてる先輩が居たと思った。
「1年Cクラス、成田麻架です」
深呼吸をひとつ。あたしは口を開いた。
「あたしは高等部からの編入組です。そんなあたしの思っている"真颯会"は…」
…あっと言う間の5分間だった。
なんか原稿、飛び飛びになった気もしたけど、楽しく喋れたからまあ良いや。
なんかすっきりした気分だ。
『最後に、1年Dクラス、中原圭介くんです』
さて、王子。あなたはどんな"真颯会"を語るんですか?
あたしは舞台袖から講壇に立つ中原くんの姿を見ていた。
「1年Dクラス、中原圭介です」
その次の瞬間、あたしは沸き上がるオーラに息を飲んだ。
「真颯学園高等部の皆さん、」
中原くんは、全校生徒を見渡すと、笑顔でこう言った。
「僕と一緒に、真颯会の伝統をぶち壊しましょう。以上です」
誰ひとり、物音ひとつ立てれなかった。
これが、3連覇王者の覇気なんだ…!