アンタ達、あたしの日常どこやった?
紙を開くと、そこにはすごく簡潔な文章がさらりと並んでいた。
『辞令』
一番上にその2文字。
『1年Cクラス、成田麻架』
はいはい、あたしがどうしたって?
『私立真颯学園高等部真颯会
今期副会長に任ず』
…おいおい、ちょっと待てよ。
『真颯会会長 中原圭介』
朱色も鮮やかな真颯会の印鑑の横には、中原くんの直筆のサイン。
…結構達筆なのね、あの人。
じゃ、なーくーて!
「副会長ううう!!?」
そのあたしの声に、周囲の生徒が振り返る。
「あ、すみませんゴメンナサイ何でもないです」
ヒラヒラと手を振って何事もない風を装っていたあたしの手から紙がどこかへすり抜けた。
え、ちょっと待った。
「へー、中原らしいやり方」
「勝手に見てんじゃないわよ本橋律!」
「だって、チラッと見えたから、見間違いだったら大変だなあって思って」
「何が大変なのよ」
「皆に教えてあげるのに」
「アンタの口はどこまで軽いのよ!見た目通りよね本当!」
「えー、成田に本橋、授業を始めても良いか?」
気付いたら、目の前まで古典の先生が来ていた。
あ、口の端がひきつってる。
これは本格的に怒る寸前だ。
「「すみません」」
あたしは本橋律から紙をかっさらい返すと、2人して頭を下げた。