魔王様と私
「……困った」
迷った。
エーテルちゃんが迷子になる前に探しにきたはずが、私が迷った。
まぁ、この城にきてまだ1ヶ月だし、仕方ないよね。うん。
なんて自己完結し、足を動かす。
歩き続ければ、きっとどこかに辿り着くだろう。そして、そこにいる人…魔人?に、戻る道を教えてもらうのだ。
その途中かそこで、エーテルちゃんに会えたら当初の目標は果たせる。
でも、今の目標は、魔人に会うこと!
なーんて、思っていた時期が私にもありました。
はい、完璧迷った。ここどこ。森庭?魔王城に庭?どんだけ広いのってくらいあたり一面花花花。
バラみたいのや、マーガレットみたいなの。色々ある。
すごくカラフルだ。
その中に、震える小さな花があった。
エーテルちゃんだ。
「エーテルちゃん」
声をかければ、大袈裟なほどエーテルちゃんの肩が上がった。
「なんですの?わたくしになにかようでも?」
情けないほどに震えるエーテルちゃんの声に、なんだか私が悪いことをしたような気になる。
エーテルちゃんの横に腰を下ろし、なるべく優しく声をかける。
「うん。エーテルちゃんと、話がしたいな」
「わたくしはしたくないですわ。いますぐここをたちさりなさい」
あくまで気丈に振舞おうとするエーテルちゃんに、私は笑顔で答える。
「うん。無理」
「なんでですの」
「帰り道がわからないの」
エーテルちゃんが初めてこっちを見た。
その顔は呆れに満ちていた。
「ばかですの?」
「違うよ。方向音痴なんだよ」
エーテルちゃんがため息を吐いた。
方向音痴音痴のなにが悪い。(開き直り)
「しかたないですわね。わたくしがまおうさまのもとまであんないしてさしあげますわ」
「うん。ありがとう」
でも、それって本末転倒なんじゃないかな。とか言わない。
言わなければ、帰り道もわかるし、エーテルちゃんとも話せるし、一石二鳥。
「いきますわよ。まおうさまのおへやはこっちですわ」
エーテルちゃんが立ち上がり、私もそれに続く。
見下ろすと、顔を紅くしたエーテルちゃんが見える。
きっと一人で泣いていたんだろうな。
そう思うと、悲しくなった。
一人で泣くのは寂しい、悲しいことだ。
つい最近、それを痛いほど味わった。
周りに人がいるだけが、あんなにも幸福だったのだと思い知った。
だからね、エーテルちゃん。
一人で泣かないで。