魔王様と私
「なんのマネですの」
気がつくと無意識のうちに、エーテルちゃんの頭を撫でていたらしい。
エーテルちゃんが下から睨んできた。
やはり、目尻が腫れている。
今度は自分の意思でエーテルちゃんの頭を撫でる。
エーテルちゃんの髪型が崩れた。
「やめなさいですの。かみのけがぐしゃぐしゃになってしまいますわ」
「ごめん。もう手遅れ」
エーテルちゃんが私の手を頭から退けるが、髪は残念なことになっていた。
なんでだろう。別に強くやった訳でもないのに。
「な!なにをしてくれますの!?これでは、まおうさまのまえにでられませんわ!」
「ご、ごめん」
エーテルちゃんのあまりの気迫に弱腰になる。
ご、ごめんね…?
「まったく…!せっかくきれいにととのえられていたのに…」
ずれた頭飾りとリボンを外し、手櫛で整えようとするエーテルちゃんだが、その小さな手では上手くできないようだ。
眉を顰め、苦戦している。
「お詫びに直してあげる」
エーテルちゃんに手招きし、近寄らせる。
本当は座らせてあげたいんだけど、椅子がないので仕方が無い。
私は膝立ちし、そのまま髪を手でとく。
エーテルちゃんの髪は長いから、やりずらい。
髪を持ち上げ、なるべく丁寧に扱う。
ロリッ娘といえば、やっぱりツインテールだよね。と思い、髪を半分に分けるが、手元にあるリボンだけでは柔いっていうか、ほどけ易い。
だから、私の服についていた紐をほどき、それできつく縛る。
「いたいですわ」
「あ、ごめん」
つい、強めていた力を緩め、もう一本も縛り、紐の上にリボンを巻きつける。
少し前までは、現役女子高生。毎朝、時間との戦いだったのだ。髪弄りの腕には自信がある。
モットーは早く可愛く。
エーテルちゃんと正面から向き合い、頭飾りもつける。
リボンの形などを微調整して、完成。
そのあまりの出来に、自分でもうっとりしてしまう。
なにこれ天使。
エーテルちゃんのふわふわドレスとゆるふわツインテールはとてもよく似合っていた。
色白金髪で、碧い瞳の幼女にピンクのドレスとゆるふわツインテール。
まるで人形のよう。
「可愛い」
私がそう呟けば、エーテルちゃんは顔を真っ赤に染めて「とうぜんですわ!」と顔をそらせた。
あぁ、可愛いな。
これがツンデレか…。前までは、ツンデレなんて、ただめんどくさいだけだと思っていたけど、エーテルちゃんは別格だ。キング・オブ・ツンデレだ。
「い、いきますわよ!」
エーテルちゃんは、私の横を速足で通り過ぎる。
その姿に顔が緩むのがわかる。
「うん」
私は、笑顔で頷き、エーテルちゃんの横を歩いた。