魔王様と私
脇役と裏仕事
私はステファノだ。
八人将の一角を担っている。
久々の戦闘だったが、思ったよりも勇者パーティーが弱かったため、自然に負けるのは難しかった。
だが、これは魔王様の勅令。
例え不可能なことでも可能にするのが八人将だ。
私は見事、やられて見せた。
そして今は、勇者の片付けをしている。
好きな女子が目の前で散々『関わりたくない』『嫌い』等の台詞を聞かされ、挙句の果てにはキスシーンまで見せつけられた。
これで完全に、勇者の心の拠り所がなくなった。
最早、物言わぬ屍になった勇者を抱え、空を飛ぶ。
海まできたら、そこにこいつを落とすつもりだ。
これが終われば、次は式の準備をしなければならない。
やらねばならないことはたくさんある。
だが、やはり魔王様は素晴らしい。
騎士とマキ様を会わせたのも、勇者に肉体的にはとどめを刺さず、マキ様を呼び出し、精神的に止めを刺すことも、全て作戦通り。
これぞ魔王。
そして、勇者の存在をマキ様に知られないように、幻術で惑わす。
ちゃっかり結婚までこぎつけられた魔王様には感服の至りでございます。
明日は素晴らしい結婚式になるだろう。
そしてお二人が未来永劫変わらぬ愛を育むことを、心から願っております。
ところで。
結婚式とはどういったものなのだろうか。
これがわからないと準備のしようがない。
わかるのは、ただ豪華な式だということだけだ。
何故人間はそんな不必要な出費を好むのだろう。
ちょっと人間襲って聞き出すか?
……はぁ。今日は残業のようだ。
息子たちよ。不甲斐ない父を許しておくれ。
私は勇者を海へ投げ捨てた。