魔王様と私

「これのどこが仕事よ」

私がそう呟いたのは仕方ないことだと思う。
なぜなら、仕事がもらえると聞いて浮上した気持ちが、まるでハエ叩きのようなものではたき落とされたのだから。
その仕事内容と言うと、

まず一つ。指定の衣装を着て、魔王様の膝に座る。

一番最初からなに言ってんだって、感じだ。
もちろん、反対したさ。
だが、私は負けてしまった。
その次の仕事、魔界の視察に。

え?そこは嫌がるところだって?
いやそれが、嫌がるようなところがないんだよ。
魔界って言っても、私が行くことを許されたのはこのお城の近くだけだけど、その辺はしっかり管理がされてるらしいし、なによりも、美味しいものがいっぱいあると聞けば、私に抗う術はない。

だからこそ、最後の仕事も了承せざるおえなかった。

最後の仕事は、魔王様の体調及びスケジュール管理。

内容は、毎朝きちんと決まった時間に起床させる。
しっかりと食事をとらせる。
働かせる。
夜更かししないように見張る。
この四つだ。
は?そんなの自分でやれって話なんだが、今の今まで仕事をサボっていた馬鹿がいることに変わりはないので、仕方なく引き受けることにした。

まぁ、そんなわけで、今まさに、魔王の膝に座っているわけだが、最早心が折れそうです。

なんで…、

なんで、この世界にもメイド服があるわけ!?

指定の衣装がメイド服って!どこの変態よ!!
くっ!羞恥で顔があげられない!
絶対今顔赤い!自信ある!

「マキちゃん、マキちゃん。顔赤いよ」

「うるさいっ!誰のせいだ!さっさと仕事しろ!」

言い方が随分と乱暴になったが、そんなことどうでもいいんだ。
今はただ、早く時間が過ぎるのを待つだけ。
後ろから聞こえる笑いを押し殺した声が癇に障る。

これが毎日続くとかなんの拷問!?
こんな仕事、引き受けるんじゃなかった!
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