シャープペンシル〜私の真ん中に先生〜


駅から少し歩いたコインパーキングに先生の車は停まっていた。


軽ぐらいの大きさで、クリーム色の車だった。



「なんか、可愛らしい車ですね。」


「家の近くの駐車場が狭いから、小さいのにしたんだ。乗りやすいしね。」



そう言って、先生は車のロックを解除した。



「お邪魔しまーす…。」




何となく緊張する…。



男の人が運転する車は、お父さん以外初めてだし…



それに…密室だし…。




車はゆっくりと動き出すと同時に


「あ、シートベルトしてね。」

と言われ、あたしは慌ててシートベルトをしようとするけど、変に緊張しているせいで上手くできずにいた。



すると、信号待ちのときに先生がそれに気付いて


「大丈夫?」



と言いながらあたしの目の前に顔と腕が延びてきて、助手席のシートベルトを掴む。



ち、近い!




たった一瞬のことなのに、あたしの心臓はどきどきだった。



「はい、できた。」


「あ、ありがとうございます…。」



信号が青になったので、先生はハンドルを握って運転を再開した。




あたしの心臓はしばらくうるさいままだった。





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