Colors of Life ~ドキドキ!ルームシェア~
奈々が紫村さんと偶然会ったのは会社の近くの居酒屋だった。
オフィス街から1本入った路地にある居酒屋は会社の近くにあるにも関わらず、同僚と鉢合わせすることがなかった。
古臭い佇まいのせいか、はたまたビルとビルの間に建っているせいで見落としてしまうのか、知る人ぞ知る名店って感じで奈々は気に入っていた。
カウンター席のみの小さな店で老夫婦が経営してた。
会社帰りにたまたま見つけたのだけれど、料理は安くておいしいし、老夫婦の人柄もいい。
この店に来ると気持ちがほっこりするのだ。
入社してから女子社員との人間関係に悩んでいた奈々は、ストレスが溜まるとこの店に来て、老夫婦と話すことで発散させていた。
その日、たまたま暖簾をくぐると紫村さんがカウンターで飲んでいた。
「あ、受付の」
「どうも」
何気ない挨拶から始まり、お互いの自己紹介をした。
酒が入っていたこともあって、話が弾んだ。
「俺はたまたま今日、発見したんだけれど、知らなかったな。会社の近くにこんな店があるなんて。奈々ちゃんってこういう店来るんだ。びっくりしたよ。いつも澄ました顔で受付にいるもんな。もっと、オシャレなバーとかに行ってるのかと思ったよ」
「あ、それ大将に失礼でしょ。私はこのお店のこの家庭的な感じが気に入ってるんです。他の人には秘密にしといて下さい。私だけの秘密の場所なんです」
「じゃあさ、2人だけのってことにしない?」