Colors of Life ~ドキドキ!ルームシェア~
彼の顔なんて見たくなかった。
踵を返すとお疲れ様でしたと早口に言い、その場を離れようとしたその瞬間___手首を捕まれた。
「奈々、ごめん」
そう言うと紫村さんは後ろからきつく奈々を抱き締めた。
「悪いのは全部俺だ。俺を恨んでくれて構わない。それでも・・・俺は奈々の事が忘れられない。今日だけでいい。もう1度あの頃に戻ってくれないか?」
その夜は彼の部屋に泊まって彼に抱かれた。
久しぶりに彼に触れると自分がどんなに彼を求めているのかが解った。
私は彼の事がまだ好きだった。
こんなにも好きだったなんて。
違う人と結婚するのに。
当然のように腕枕をしてくる逞しい腕も、髪を撫でる長くてキレイな指も、彼の使う香水の匂いも1つ1つ記憶に留めた。
もうこれで最後。
この男は最悪だ。
金と権力しか頭にないんだ。
そう心に言い聞かせて。
「奈々、前より笑わなくなったな。笑顔、好きだったのに」
「誰のせいだと思ってんの?」