Colors of Life ~ドキドキ!ルームシェア~
「待って、お兄ちゃん」
お兄ちゃんはすでに入場券を購入していて、寺の中へと進んでいる。
慌てて後を追い、お兄ちゃんの背中に追いついた。
寺の中は真っ青なアジサイで埋め尽くされていた。
真っ青なアジサイに溶け込むようなスカイブルーの傘を差していたお兄ちゃんは、アジサイの咲き乱れる庭に立ち尽くしていた。
「やっぱりアジサイは真っ青がいいな・・・」
ぽつりと呟いた声が震えていたので、顔を覗き込むとお兄ちゃんは静かに泣いていた。
話は数週間前に遡る。
6月に入るとすぐじめじめした嫌な季節がやって来た。
玄関先の花壇に植えたトマトはサンゴちゃんが支柱を立てて、ぐんぐん育っているけれど、バジルの方は毎日のように降る雨のせいで根腐れしてしまったみたいだ。
サンゴちゃんがまた買わなくちゃとちょっぴり怒っていた。
「何これ、マリモ?」
サンゴちゃんが食卓に生けた花は緑色で芝を丸くしたような不思議な花だった。
「手毬草っていうんですって。カーネーションの仲間らしいわ」
「へぇ~、面白いね」
外はずっと雨が降っているので、休みの日でも出掛ける気分になれなかった。