Colors of Life ~ドキドキ!ルームシェア~
店内に足を踏み入れた瞬間の咽るようなタバコの匂いに思わず顔をしかめる。
美空さんがこの時間、店を開けるために1人で来る事を、予めルビーママから聞いていた。
ステージ横のテーブル席に座ってと促された。
美空さんが店の奥からオレンジジュースを持って来て、あたしの前に置いた。
「そういえば、妹がいるって言ってた・・・よく見たら目元とか似てるかも・・・何であの時気づかなかったのかしら?・・・で、私と何を話したいの?」
美空さんは冷めた目であたしを眺めていた。
「お兄ちゃんは本当に美空さんが好きだったんです。そんなお兄ちゃんの気持ちを「遊びだった」で片付けてしまう美空さんを理解出来ません」
「私に説教するつもりなの?」
「違います。言い方が悪かったですね。すみません、あたしは美空さんの本当の気持ちが知りたいんです」
「本当の気持ち・・・」
美空さんはふっと笑うと口を噤んでしまった。
「ここのお客さんだったんだよね。今の旦那さん」
美空さんは細くて白い指で髪を耳に掛ける。
悲しげに笑う表情がとてもキレイだと思った。
旦那さん・・・水族館に一緒に来てた中年男性のことだろうか?
美空さんとは随分、歳が離れてた。