Colors of Life ~ドキドキ!ルームシェア~


 子供が生まれるまでは・・・結婚生活も1年が経つと彼は家に帰って来なくなった。


 朝方にベロベロに酔っ払って帰って来た時は知らない香水の匂いがした。


 「ある日、彼が泣いている赤ん坊の海をうるさがって暴力を振るったの。これ以上堪えきれないって思って、逃げるように実家に帰ったの」


 それから離婚届けを出してからは元旦那とは音信不通らしい。


 美空さんは実家暮らしに戻り、両親の協力もあって、シングルマザーながら息子を育ててた。


 「1人になってから、海のためになりふり構わず頑張ってきたのよ。私はもう、楽になりたいの。お金の事も、気にしないでのんびり暮らしたいの」


 「それって自分が楽になりたいから結婚を選んだんですか?・・・お兄ちゃん、泣いてたんですよ。美空さんが幸せになるならそれでいいって。あたしにとってお兄ちゃんはいつも冷静で憧れだったのに、そのお兄ちゃんの泣いている所を始めて見たんです。何だかすごく、切なかった」


 「葵に初めてあった時、なんてキラキラした瞳をした男の子なんだろうって思った。素直で、未来が広がってて、そんな彼が自分に好意を持ってくれて嬉しかった。でも、私の中では遊びだったの。彼の気持ちは嬉しかったけど、重かったの」


 葵には申し訳なかったと思ってる。


 あなたや友達の前で葵を悪く言ってごめんなさい。


 最低な女だったと恨んでくれてもいいからと美空さんは続けた。


 カツンカツンと階段を上る足音が聞え、美空さんが我に返った。


 「ママが帰って来たわ。悪いけど、もうそろそろ着替えなきゃ」


 美空さんは立ち上がった。


 入り口の扉が開き、ビニール袋を提げたすっぴんのルビーママが店内に入って来た。

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