Colors of Life ~ドキドキ!ルームシェア~


 彼はそれを許してくれて、それでも彼女と一緒になりたいと言ってくれた。


 ズルイ女だと思われてもいい。


 でも、お兄ちゃんと過ごした日々は、幸せでキラキラした思い出になった。


 「海くんがお兄ちゃんにブトニアを渡したのも、紅虎の演出だったの?」


 「いや、あれは完全な彼のアドリブだよ。泣かせるよな~、無邪気な所が・・・もう、会うこともないのにな。また遊んでねとか言っちゃって」


 言ってて切なくなったのか紅虎は口を噤む。


 「まあ、葵も留学するし、きっと向こうへ行ったら金髪美女のガールフレンド出来るんじゃねぇの?」


 わざと明るく言った。


 着信音が鳴り、パンツのポケットから携帯を取り出すと、紅虎は電話で話ながら階段を上って行った。


 電話の相手はお兄ちゃんらしい。


 美空さんの結婚式で泣いた日を境に、お兄ちゃんはいつものお兄ちゃんに戻った。


 きっとお兄ちゃんの中で何かが吹っ切れたんだと思う。


 本当はお互い思い合っていた。


 けれども別れる道を選んだ。


 少しの勇気でお兄ちゃんは一歩前に進んだみたいだ。


 一歩踏み出す勇気か・・・携帯を握り締めていたあたしは、深呼吸をして、電話をかけた。

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