キスは触れて離れた……
甘いキスは触れて離れた……
「雨だ……」

 ぽつんと頬に当たった雨が、次第に強くなり……やがてそれはザーザー降りになった。

 着ていたTシャツがビショビショになって、思わず屋根のある小屋の下に逃げた。

「最悪……でも、何か今の自分には似合ってる天気かな」

 こんな事をつぶやきながらやみそうもない雨空を見上げていると……。

「君、大丈夫?」
「え?」

 声をかけられて驚いてその方向を見る。

 すると、傘をさして歩いていた男性が心配そうに私を見ていた。

 これから出社するんだろうか……カチッとしたスーツに身を包んでいる清潔感のある男性だ。
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