【短】隣の君
ポタポタ…――。

暖かい透明な滴が瞳から溢れては、
一粒二粒と地面に吸い込まれていく。


あの二人を見てから…
あたしはとにかく走った、はしった、走り続けた。
息が切れて、しゃがみこむくらいに。


いつも通る道とは逆方向の、大通りまであたしは来ていた。

人が沢山いる。

こんなとこで泣いてたら…なんて思ったりするけど、今はみんな自分のことで精一杯なんだ。

ショーウィンドウの影に隠れてるあたしのことなんか誰一人見ることはない。


そう考えると、悲しいけどなんか安心して…

あたしはコンクリートに滴をまた落とした。
< 7 / 15 >

この作品をシェア

pagetop