嘘、鬼よ。
「気合い入ってるな…」
後ろからそんな声がした。
……気づかなかった。
「気配を消すなんて趣味が悪いぞ、土方。」
考え事をしていたにしても、この幕末の世で簡単に背中を許したりするのは危険だろう。
「なんとでも言え。」
そう言うと、私の数歩手前に立つ。
………。
「…なんだ。
見られてると気が散る。」
「…お前、無理そうなら今回の御用改めは参加しなくてもいいんだぞ。」
なんだ、なんだなんだ。
「私は足手まといか」
「そんなこと言ってるんじゃない。
お前は太刀なら組1だと思うし、度胸もある。
……しかし、お前は女じゃないか…。」
最後は小さい声でギリギリ聞こえるか…というくらいだった。
女…ね。
まぁ確かに私は女だし
というかそもそもこの時代の人間では無いわけだし
止められるのもわからなくはない。
そして土方が畳み掛けるようにもう一言。
「女にはこんなことを無理だ。
というか、させたくないんだ。」
しかし、ここまで決意を固めていたのにどうして直前になって、こう揺るがすようなことを言うのだろうか…。
いや、こんなので揺らぐ自分もおかしいのか。
冷静に考えろ三冷。
女だからってなんだというのだ。
私はこの目で確かめたい、とそう願ったじゃないか。
大丈夫、だてに冷たい性格してるわけじゃない。
「いや、私は一番隊なわけだし池田屋にいく。
幹部の私が行かなかったら平隊士に不信感を持たせてしまうし、なめられても困るからな。」