嘘、鬼よ。
息を飲むおとが聞こえてきてもおかしくないほどの、緊迫感。
そんな、雰囲気を作り出しているのが、他の誰でもない私であることは、間違いない。
こう、突飛で摩訶不思議な話となると、真面目に話さないと、笑って流されてしまう。
「私は、今から約150年近く後の時代から、やって来た。」
「…………は?」
案の定、といったアホ面が並ぶ。
「恐らく、時間を飛び越えて来たんだ。
分かりやすく説明すると、今の君たちが、室町幕府が開かれてた時代に行ってしまう。のような状況にある。
つまり、今よりも過去に、今の自分が来てしまうことを指す。」
説明とは難しいな…。
現代の人間ならば、タイムスリップなどと言えば大抵理解してもらえるだろうに。
「なるほど!つまり、三冷は未来の人間なんだな!」
原田のような単純な頭の方が、こういったことは理解しやすいのか納得した面持ちだ。
「そういうこと。
私がいた時代はここから150年後。
文明は変化し、様々な文化的交流や、国家の思想も変わっている。
教育の徹底、働く義務、納税の管理まで。
逆に問題も多々あるものの、この文久3年の世とは比べ物にならないほど便利で安全安心な世の中なのだ。」
こいつらが電子レンジとか見たら腰抜かすだろうな…。
「そんなことまで…。
嘘をいっているようには、思えないな。」
土方が顎に手を当てて考えるそぶりをする。
そんなのでさえ、絵になってしまうのだから、ムカつく。
「わかった。
完全に信じたわけではないが、とりあえずといったところは、信じよう。
そうすると、今までの不可解な言動もなんとなくわかってくるしな。」
なんだ、以外だな。
あっさり。
「そうか、それはよかった。」
「なぁなぁ、じゃあ俺達の名は、未来まで語り継がれてたりするのか?」
藤堂の無邪気といった笑顔が眩しいくらいに向けられる。
これは、言っても良いことなのだろうか?
しかし、もしそれがダメだとしたら神は私を殺しているはず。
でなくば、今話そうとすれば殺すはず。
ということは、話してもいいのではないか?
そもそも、私という存在事態がここの世では異質なのだ。
私がここに来てしまった時点でタブーは無いと解釈していいのだろうか?
「あぁ。
私の世にまて壬生浪士組の事は、伝わっている。
最後の武…っ………。」
最後の武士。
これは、言わない方が彼らのため、か。