嘘、鬼よ。
「今、組長たちの幹部だけで島原にいるらしいぜ」
「え、それって芹沢さんもか!?
珍しいな…」
「なにか特別な決定があるとかじゃないか…?」
「さあな。
でも三冷さんは行かなかったみたいだぜ。
あの人も幹部なのにな。」
いつもなら耳に入らない雑音が入ってくる。
「あれじゃん、一応よそ者だったし。」
「あーそうだよな。
拷問されてたって噂も嘘じゃないらしい。」
こんな日に限っていやな事を聞く…。
「でもじゃあなんで幹部なんだろう?」
あと数時間後にはあの人がなくなると言うのに。
「強いからじゃないかー?
あの人、新撰組一強いぞ。たぶん。
あ、でもさ、色仕掛けっていう線もあるぜ!
あの人美男子だし、幹部の中には男色の人もいるらしいから!!」
「うっそだろ!?
男色って…うえーー」
ガサッ
『まずい!三冷さんだ!!
今の聞かれてたかな!?』
『聞いてたら怒ってるだろ!!
とりあえず逃げろ』
今さら小声にしたところで遅いんだよ。
頼りなさそうに逃げてく背中は、本当に最後の武士と呼ばれた組に入っているものなのだろうか?と疑いたくなる。
とりあえず、暗殺のことは平隊士に漏れてはないようだし、良しとしよう…。
きっと今ごろみんなは、一生懸命芹沢に飲ませてんだろうな…
あの人はそれをわかっていて飲むんだろうか…。
それとも酔ったふりでもするのか…。
こんなこと考えてもなにも変わらないのに、考えてしまう。
先程平隊士が会話していた縁側に腰を掛けて、空を仰ぎ見る。
この青い空が、彼のみる最後の物となる…