嘘、鬼よ。
夜。
静かな摺り足する足音と、キシリといった腐った床がきしんだような音で目が覚めた。
廊下に誰かがいるはずなのにそのあとは足音がしなくなる。
そんな状況を踏まえると、事が今からということを察することができる。
実際ほとんど眠れずただ目を閉じていただけだから、気づいたのかもしれない…
自然と体が動き、自分も忍び足のなりつつ、部屋を出た。
向かう所は言うまでもない。
原田に詳しい配置を聞かずとも大体は予測できる。
暗殺班が居ないかつ、芹沢が眠る部屋が見える位置へと移動する。
見ただけでは、ただの静かな夜…。
しかし目を凝らすと物陰に人が潜んでいるのが見える。
1、2、3…
縁側には3人…か。
いや、もっといるか?
よく見えない……。
こちらは死角になっているため大丈夫だが、もし見つかったら危ないな…
といっても、刀も持たずに来たんだ。
はなから邪魔する気などない。
弱虫な自分を慰める訳じゃないが、歴史は変えてはいけないんだ。
私は、そうやって逃げた。