嘘、鬼よ。
【9】
「さ、今日もはりきって巡察にまいりましょーかー」
腰に飾りの刀をぶら下げて…
背中に誠の文字を任せて……
私はどうしたらいいのだろう。
新撰組に入る原因となった長人の志摩が、飾りの刀を抜いた時あんなには腹が立ったと言うのに、今では私もその飾りをぶら下げている偽物の武士だ。
こんな自分が腹立たしい。
情けない。
しかし、長人や不逞浪士にだって人の人生がある。
そんなものを斬り捨てて背負っていくなんて私にはとても無理だ。
「三冷さん?…三冷さーーん?」
「うわっ、なんだよ」
「ボーッとしてましたよ?
お腹減ったんですか
甘味屋行きます?」
ボーッとしてる=お腹が減った に繋がる沖田のその精神に敬礼。
「減ってない
そもそも巡察中はダメだろ。」
「三冷さん何言ってるんですか?
"今"なんて誰も言ってませんよ?
うわー、いけないんだー」
こいつぅ…!
『あの新撰組がまた来てるらしいで』
?
一本隣の道からだろうか。
薄く、男の声が聞こえる。
『そうそう、怖いわぁ…』
今度は女。