嘘、鬼よ。













『京都守護職なんて結局、幕府公認のただの人斬り集団やないの』



そう、実際そう考えているのも現代にだって、この時代にだって少なくない。


しかし、これは不味くないか…?





「………」


沖田や他の隊士も聞いちゃってるわけだし。





『浪人と見れば誰だろうと構わず斬り捨てんねんて。
私達だっていつ浪人と間違われて斬られるか分からん。』


そうだ。
新撰組は鬼だ…。

情けなどない。


刀を抜いて敵意を示した瞬間視線は殺意へと変わる。


『人殺しや、人殺し。
なんであんなんが京を守ってん。』


『ほんとやなぁ。人殺し』




沖田の耳がピクッと動いた。


耳を動かせるなんて器用だなぁ…じゃなくて、これは不味い……!




相当不機嫌だ。
斬り捨てはしないだろうが何かやらかしそうで怖い。




「…………」



すると無言で声のする方へと歩き出す沖田。



面倒ごとにしないでくれ…。

沖田だってそんなことくらいわかってるはずだ。






「どうも。
随分と素敵なお話をしていらっしゃるようで…
僕も混ぜてはもらえないでしょうか?この新撰組沖田総司も」





腹黒い笑顔にこちらも寒気がした。













 
< 88 / 141 >

この作品をシェア

pagetop