調○彼女
私は先輩の言っている意味を理解するのにしばらく時間がかかった

でも痛みで我に返った…

先輩が私の顔を覗き込んで、切なそうな顔をしている。私は眉をしかめながら見つめ返した

「痛い?」

「痛いです」

「ごめんね…、大丈夫?」

「ひとつ上の男子と、殴り合いの喧嘩をしたときよりは痛くないです」

私は気を紛らわそうとして、苦笑いをした
先輩の体から、私なんかよりずっとずっと早くて強い心臓の鼓動が聞こえていたから…

先輩は安心したように笑う。無性に可愛いカッコイイよ…

「どっちが勝ったの?」

「私は負けたことがありません。顔面パンチでノックアウトです」

ははっと先輩が笑って、私も笑った



…後の事はあんまり覚えてない…

痛みと強い引力との間で私はもう何も考えられなくなったから…

その瞬間、その時だけを私は生きていただけ。先輩との一瞬だけ…
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