記憶の欠片
1ピース
その日は天気の良い日やった。
空が青く澄み渡った休日に
俺と『あいつ』は2人で出掛けとった。
だいぶ寒くなった季節
寒がりな『あいつ』は
もう薄手ではあるけど
ニットのカーディガンを着て
「寒い…」なんて身を震わせていた。
逆に暑がりな俺は
まだ七分袖で十分なくらいで
あまりに早すぎる『あいつ』の厚着に
「お前暑苦しいねん!」なんて笑った。
2人の利き手の薬指には
お揃いに光る銀色の指輪。
部活を引退してから
俺が必死に家で手伝いをして
集めまくった臨時小遣いと
密かに溜めとった金で買った指輪。
これを渡したとき
『あいつ』は顔を真っ赤にして
「あんたアホやないの?」とか
言ってたけど
指に嵌めてやったら
すっごい嬉しそうな
幸せそうな顔をしとったんを覚えとる。
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