世界が終わる時の景色
日向は気づかない。
「志乃」「莉麻」とふたりの名前を呼ぶたび。
「好きになる」「忘れる」と言うたび。
そして「決めた」の一言で、
苦しそうに、辛そうに顔が歪むのに。
自分に言い聞かせるように、念じるように、
そんな言葉ばかりを繰り返して。
「…おまえがいいなら、それでいい。
でも、後悔はするな」
諦めたように父は、部屋を出て行った。
「……」
手のひらで目元を覆う。
涙は出ない。