世界が終わる時の景色



「これから振る女に謝罪なんて、いらないんだよ?」


くすりと悪戯げな笑み。

だけどその瞳はすぐに伏せられた。


「…ひとつだけ、聞きたいんだ」

「…うん」

「…日向くんは…一度でも、私を見てくれた?」


戸惑いがちに向けられる、縋るような目。

真っ直ぐ見つめて、逸らさずに言葉を返す。


「…志乃とは違って、子どもみたいにかわいい莉麻を、

ちゃんと見て好きになろうと思ったよ」

「…そっか」


驚いたように見開かれた目には、
じわりと涙が浮かんだ。

そして莉麻はくるりと後ろを向き、


「…振って」



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