世界が終わる時の景色
令嬢と執事
彼の一日は、彼女を起こす朝から始まる。
「起きてください、志乃(しの)お嬢様」
「…んー…」
「お嬢様」
「…キス…してくれたら、起きる…」
「…お嬢様。あまり困らせないでください」
「命令よ…」
はぁ、と深く溜息を吐いた彼は、
腰を折って柔らかいベッドに手を付き、
まだ目を閉じたままの彼女の唇に口付ける。
「…おはよう、日向(ひなた)」
途端にぱちりと目を開けて微笑む彼女。
寝ぼけた様子は無い。
ただ彼を困らせたかっただけの様だ。