世界が終わる時の景色
「ねぇ、今夜は?」
長い髪を丁寧に梳かしながら鏡越しに日向を見つめる志乃。
黒目がちな瞳が朝日に反射して、綺麗に輝いている。
「旦那様が帰っていらっしゃいますので」
「いいじゃない、別に…
誰も私達の関係なんて気づかないわよ」
「用心するにこした事はありませんから。
志乃お嬢様、早く着替えてください。
遅刻してしまいます」
「……」
「…志乃お嬢様」
「…わかってるわ。
貴方は私の命令を聞いているだけだものね」
「……」
否定も肯定も出来ない、志乃の意地悪な問い掛け。
何も言えない自分が歯痒く、
ばれないように唇を噛む日向。