世界が終わる時の景色
「…は?」
「一緒に逃げて」
「…何言ってるの」
「…お願い、日向…」
普段の彼女とは真逆の、弱々しくか細い声。
細い腕が、縋るように日向を抱き締める。
「一度は決心したわ。結婚しても貴方は離れないって言うからよ。
私の結婚は南十字のためになる。そんな事わかってるもの。
でも、私はやっぱり捨てられない」
涙を堪えたような、震えた声。
日向の胸から顔を上げた志乃は、潤んだ視線を向けて。
「日向が好きなの。ずっと、小さい頃から。大切なの。
執事と主人として束縛出来るなら、それでもいいって思う程に。
その気持ちも、日向も、私は捨てられない…」