世界が終わる時の景色
さよなら
あれから彼女とは、殆どまともな会話をしていない。
目を合わせる事も無く、
執事としての必要最低限の会話だけ。
今の彼女に掛ける言葉が見つからなかったし、
何よりこの家の主人が帰ってくる準備で忙しかった。
父とも、あれ以来話せていない。
この家の総統括として、
慌ただしく準備に奔走しているからだけど。
だから、あの言葉の真意はわからないままで。
「失礼致します、志乃お嬢様。
旦那様が帰っていらっしゃいました」
「…そう。今行くわ」
秋の夕暮れ。本日初めての会話だ。
使用人を困らせるような行動も無い。
朝も自分で起きるし、何も言わずとも勉強している。
最近の志乃は、おかしい程に大人しかった。
「お父様、お帰りなさい」