気まぐれ作品置き場
それならばと。


能九さんの顔をのぞきこむ。額には大量の汗。大粒がこめかみへと流れる。


苦しむ能九さんの耳にそっと僕の口を近づけて。



「ああっ、あ、が……あああああッ!!」


「能九さん、能九さん。起きてください」


「あああああッ、が、ちが、違うっ!おれっ、俺、の、名前はあっ」


「能九ですよ。それ以外、何があるっていうんですか。あなたは能九。そうでしょう?」


「ちがっ…「違いません。いい加減、帰って来てください。こちらの世界に」


「俺はっ、おれ、は、のうく……?……………………………………のう、く………………」



すやすやと、ようやく寝静まった能九にまったくと溜め息をつく。


あなたは能九さんですよ。

僕を救ってくれたのは、まぎれもなく、あなたなんですから。


ねぇ、能九さん?

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