気まぐれ作品置き場
「………もしかして、」
「テメェ……まさか外に出ようってわけじゃ……っおい!」
能九さんの心配(本人は否定)も余所に、僕は玄関へ向かい外へ続く扉を開いた。
「っ、はあっ………暦逢ああっ、ぐ……………ああッあああああああッ!!」
「やっぱり……あなただったんですね、【東雲】(しののめ)さん」
「れ、きいっ……暦逢れきあレキアあああっ!わし、儂はっ、お前に会いたかった……っ」
「はい……僕も、あなたを忘れたことなんてありませんよ。
僕の家に入りましょう?このままでは風邪を引いてしまいますから………。
!!」
「ったく、いきなり走んなっつうの。俺だってまだ傷が完治してねえんだからよおう。
おら、いくぞ」
東雲(しののめ)さんを支えて後ろを向くと、そこにはちょうど能九さんがいて。
「やっぱり、優しいですね能九さんは」
「…………うっせ」
そっぽを向く能九さんの手には傘。
僕と東雲さんに雨がかからないよう、代わりに自分が少し濡れてもコチラに傘を傾けてくれている。
だから、僕はあなたを嫌いになれないというのに。