気まぐれ作品置き場
あの温もりがまた欲しくて、だけれど会うことのないあいつの、最後の言葉(優しさ)が憎々しくて。
『もうお行き』と、まるで最初から離れることが分かってたかのような口調は、より一層俺を奮わせた。
ぽつり、…
「雨か……」
気づけば暗雲。もうじきに土砂降りとなるだろう。
「蜘蛛さまあ……濡れちゃいますよおう。はい、羽織をどうぞお」
「お菊……お前こそ濡れるぞ」
「せらせら……蜘蛛さまはお優しいお人ねえ。うちも好きになりそおう。
……あら?懐に入れた皿が、足りない………一枚、足りない。いちま、い……………一枚足りないよおおおうっ!」
キーキー喚くお菊の声に顔をしかめてしまうのは、いつものこと。
妖怪・お菊はきっと誰でも知っている(はずだ)。
『一枚足りない、一枚足りない…』そう毎度毎度連呼するものだから恐るるに足りない。