気まぐれ作品置き場
『もうお行き』
そう突き放したあんたに、最後まで笑ってたあんたに、俺はなにを期待する?
頼むからもう、忘れさせてくれ。
頼むから……
「ぎゃは、おうおう蜘蛛。なあーに黄昏(たそがれ)てんだよおう」
「……火前坊(かぜんぼう)」
突然朧車に入ってきた火前坊に視線を向けながらも、顔だけはうつ向かせていた。
すると、ぽんと頭に温もりがきて。
「!」
「糸張るこたあ、ねえよ?お前とは仲間じゃーんっ、楽しくいこうって」
『そう緊張せえへんでも、ええんやで?とって喰おうとは思いまへん。楽しくいきましょうさかい』
頭に馴染む温もりと、心に響くその言葉。忘れたくとも忘れられない。