クレア
One
――クレア――
その名は呪い。
ずっしりと重く、離れにくく、それでいて凄く簡単。
びったりと張り付いて取れないと思いきや、ある日突然落ちる。嫌になるほど重たいと思いきや、ある日突然ひょいと軽くなる。いつも苦戦して悩んでいたと言うのに、ある日突然理解できるようになる。
それでいて皆から愛され、皆を愛し、無知で幼くとても儚い――
「クレア」
頬に何かが触れる。
冷たくて、柔らかくて、気持ちがいい。
「クレア」
愛しい貴方の声。
声変わりの途中で少し嗄れているけれど、それもまた愛しさのひとつ。
「クレア」
耳に掛かる吐息がこそばゆくて、なんだか起きるのが恥ずかしい。
そしてこのまま、貴方の声を聴いていた――
「クレア!」