蒼宮の都
「御挨拶が遅れました。私は黎明(レイメイ)様の侍女マルジャーナと申します」

マルジャーナは綺麗な所作でお辞儀をした。

「マルジャーナ……華(フアン)の国の方ではないのね?」

訛りのない言葉遣いといい、顔立ちも華国の人間とは少し違っている。

「いいえ、『マルジャーナ』はこの国に来る時に賜った名です。早くこの国に馴染めるようにと」


「ラサっ」

ラサが言葉を発するより前に、元気な声が飛び込んできた。

「黎明……様」

「様ナンテ呼バナイデ、私トラサハ友達デショ?」

頬を膨らませる黎明にラサは困ったようにちらりとマルジャーナを見る。

「構いませんわ、姫様がそう望まれているのですから。でも、他の侍女の方々の前ではお気をつけくださいね」

唇の前に指を立て、にっこり微笑むマルジャーナに、ラサはほっとする。
彼女は話の分かる人間らしい。

『ラサと話があるの、暫く誰も入れないでくれる?』

「畏まりました」


マルジャーナはゆっくりと頭を下げ、扉を閉めた。
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