蒼宮の都
二人きりになると、黎明は長椅子にラサと並んで座った。

「昨夜ハアリガトウ……藍深(ランシン)ニモ散々シカラレタワ……」

「藍深って言うのね、黎明の好きな人……優しそうじゃない」

「優シイダケジャナイノ、藍深ハツヨクテ、頭モイイシ、華デハ女ノ人ニスゴク人気ガアッテ……」

黎明は言いながら、真っ赤になってうつ向く。

(可愛いなぁ……)

ラサは素直にそう思った。
真っすぐで、純粋で、黎明は本当に藍深が好きなのだろう。

(片想いしか知らない幼い娘を、顔も知らない異国の男に嫁がせるなんて、なんて酷い親なのっ?)

いつの間にか、ラサは黎明に深く同情していた。

幼くとも、黎明は華の皇女だ。
この婚姻は国を背負っている。
黎明の感情でどうこう出来るものでないことは、彼女も分かっているだろう。
だからこそ、あんな無茶もした。


(せめて、黎明に想いを告げさせてあげたいけど……)

この時のラサは、深い考えもなくそう思っていた。




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