蒼宮の都
『ニ夜』
マルジャーナに伴われ、ラサは黎明の暮らす離宮を後にした。
着ていた服は洗濯したと言われ、仕方なくマルジャーナの着替えを借りている。
華国の衣装ではなく、ファティマの庶民が着る服だ。
「着替えまで貸して貰って、ありがとう」
「此方こそ、大したおもてなしも出来ず、申し訳ありません。姫君は夕食もご一緒したいと仰っていたのですが……」
言葉を濁すマルジャーナに、ラサは木立の向こうに隠れつつある離宮を振り返った。
後ろ髪を引かれる思いだが、今のラサが黎明のためににしてやれることは何もない。
彼女は皇女で、ラサはスラムの人間、立場が違いすぎる。
吹っ切るように、ラサは前を歩くマルジャーナの凛とした後ろ姿を見つめた。
美しく、聡明で、スラム育ちのラサを見下したりもしない。
「マルジャーナみたいな人が侍女で、黎明は幸せね」
「そんな……」
ラサの言葉に、マルジャーナは複雑な笑みを浮かべた。
着ていた服は洗濯したと言われ、仕方なくマルジャーナの着替えを借りている。
華国の衣装ではなく、ファティマの庶民が着る服だ。
「着替えまで貸して貰って、ありがとう」
「此方こそ、大したおもてなしも出来ず、申し訳ありません。姫君は夕食もご一緒したいと仰っていたのですが……」
言葉を濁すマルジャーナに、ラサは木立の向こうに隠れつつある離宮を振り返った。
後ろ髪を引かれる思いだが、今のラサが黎明のためににしてやれることは何もない。
彼女は皇女で、ラサはスラムの人間、立場が違いすぎる。
吹っ切るように、ラサは前を歩くマルジャーナの凛とした後ろ姿を見つめた。
美しく、聡明で、スラム育ちのラサを見下したりもしない。
「マルジャーナみたいな人が侍女で、黎明は幸せね」
「そんな……」
ラサの言葉に、マルジャーナは複雑な笑みを浮かべた。