蒼宮の都
王宮のある高台を南へ下ると、貴族や豪商達の邸が建ち並ぶ区域がある。
そこを抜け更に歩くと、道が開け、露店が林立する市場(スーク)に出る。
小麦やスパイスは勿論、肉、魚、野菜、果物、衣類、宝石、薬に駱駝や馬車まで、揃わない物はないと言われるほど、ファティマの市場は物と人であふれている。
市場の両側には旅の商隊が泊まる宿や、飲食店などの大きな建物が並んでいる。

ラサの暮らすスラムは、その賑やかな通りから細い路地を西に入った奥、「旧市街」と呼ばれる場所にあった。

旧市街は、ファティマが建国されるずっと前に、デイマシュクを含む広い土地を支配していた古い王朝の城塞都市跡で、今でも崩れかけた建物や城壁などがそのまま残っている。
市場から離れていることもあり、滅びた国の建物に手を付ける人間はいなかった。

何時しか、そこは親を亡くした子供達が住む場所となり、その事はラサにとっても大きな幸運であった。

< 19 / 26 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop