蒼宮の都
四人で暮らしはじめて一年程が経つ。
それまで一緒に暮らしていた青年が、旧市街を出て行ったのは、イサークがアニースとアリーを連れ帰って間もなくのことだ。
ある程度の年齢になれば、一人立ちをしてここを出て行く……分かってはいても、それは寂しいことだった。

来月には、ラサも16歳になる。
イサークは一つ年下。
アニースとアリーはこの春7歳になった。
20歳になる前にはここを出るのが慣わしだから、ラサもそろそろ身の振り方を考えなくてはならない。



「ラサ」

「えっ、何?」

いつの間にか、すぐ側に来ていたイサークを振り返る。

「……考え事か?」

「ちょっとね。どうしたの?」

イサークは言うのを躊躇うように、竈の前に座るラサの隣にしゃがみ込んだ。
窓から、夕暮れ時の風が吹き込んでくる。

「……どうだった、宮殿は?」

「どうって……そりゃあ綺麗だったわよ、まるで別世界」

「王宮にも入ったのか?」

「いいえ、遠くから見ただけ」

蒼く輝く王宮殿は、幼い頃からラサの憧れだった。

「でも、あんなに間近に見たのは初めて。やっぱり綺麗だったわ」

「そっか……」

イサークは小さく笑って、アニース達のところへ戻って行った。

一体何が聴きたかったのだろう……?

首を傾げながら、ラサは吹き零れそうな鍋の方へ、慌てて意識を戻した。
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